飲んだくれの記

方向音痴で熱しやすく冷めやすい、酒とラーメンの大好きなポンコツが綴る徒然の記。

やがて哀しき外国語 読了

やがて哀しき外国語 (講談社文庫)

やがて哀しき外国語 (講談社文庫)


村上春樹氏がプリンストンとボストンに滞在していた時に書かれた(といっても、今どこに住んでおられるのかは知らない)軽妙なエッセー集。


今まで僕が読んだ村上氏作品中(短編集含め、たった四作だけど)でもっとも面白かった。


安易な日本賛美やアメリカ賛美とは無縁の、地に足のついた健全かつ身体的な感覚が非常に説得的。テーマはマラソン大会からジャズ、白人社会、東西海岸での気質の違いなど、多岐にわたる。ライトで読みやすい文体もあいまって、いちいちうんうん、そうだよねーと頷きながら読みきった。


アメリカは決して思想において一枚岩ではないってことが、このエッセーを通じてよくわかる。これはまぁ、常識といえば常識なのだが、同じ白人社会だけをとっても、田舎と都会、東と西ではライフスタイルから思想、気質まで全く異なるわけだ。僕自身も、向こうの人と接していて、これはしばしば感じることだけれども、しばしば日本人が看過しているところであるように思われる。ワシントンだけがアメリカではないのに。


エッセーの中から立ち現れてくる村上氏の人物像も、その自然体な中庸ぶりがなかなかに魅力的に思える。ややファンとしての傾倒が深くなってきているかも。