飲んだくれの記

方向音痴で熱しやすく冷めやすい、酒とラーメンの大好きなポンコツが綴る徒然の記。

ピンチクリフ・グランプリ 最高!

シアターN渋谷で、観てきました。


ピンチクリフ・グランプリ
http://www.pinchcliffe.com/


実はこれ、30年も前の、ノルウェーの人形劇アニメです。ノルウェーでの累計観客動員数は、総人口を上回るという、伝説のアニメーション。
ずっと観たくて観たくて仕方なかったこれ、やっと、やっと、観ることができました!


果たしてこれ、期待にたがわぬ大傑作でした!
人形であることを忘れる精緻な動き、ディテールに凝りまくった細かい描写、心が暖かくなるほっこりした人間(と動物)描写、そしてクライマックスの手に汗握るエキサイティングなレースシーンの迫力!どこをとっても一級品。


ストーリーは、比較的シンプル。
ノルウェーのどこかにあるピンチクリフ村に住む、気のいい自転車修理工のレオドルは二人の助手である、アヒルのソランとハリネズミのルドビグと一緒に暮らしていた。天才発明家でもあるレオドルは、ある日新聞で、かつての弟子であったルドルフが、自分の発明を盗んで作ったスーパーカーで、グランプリを連覇していることを知る。このルドルフがまた、イヤなヤツなのだ。
レオドルたちはこれに奮起してグランプリに挑戦しようとするが、しかし車を作ろうにも、金がない。アヒルのソランはそこで一計を案じ、なぜかピンチクリフ村に滞在していた(なぜかテント暮らし)石油王に、スポンサーになってもらおうと行動を開始する・・・
色々あって、やがてレオドルのスーパーカー、イル・テンポ・ギガンテ号が完成。しかしこれを知ったルドルフはレオドル宅にこっそり侵入し、何かを仕掛けたようで・・・
そしてクライマックスは、いよいよグランプリ。ハラハラドキドキの大対決!!!


前半はややまったり進行。このあたりは、やはり時代を感じる。しかしこれがまた、温かいんだよな。ソランやルドビグの生活の様子が丹念に描かれており、すぐに彼らがいとおしくてたまらなくなってくる。お互いを大事にする感情も丁寧な描き方で、たとえば、主人公レオドルが、気弱な助手のルドビグをいたわってそっと肩を抱いたりするシーンなんかは、人間が演じるよりもずっと優しさに溢れているように思われる。
そして後半のレースシーンに入ると、一気にボルテージは頂点に達する。実写かと見まごうスピード感からくるその迫力に、思わずシートに身体が押し付けられるように感じるほど。しかしその表現にはやはりアニメーションならではの大胆なデフォルメも織り交ぜられており、ある意味実写を超えているとさえ言えそうだ。そして随所にちりばめられたユーモアがまた、飽きさせない。そうしたシーンのたびに劇場内がドッと沸いてたよ。こういう観客の一体感も、久しぶりに感じたなぁ。


人形の動きの素晴らしさは、もうあ然とするほどですよ。バンド演奏のシーンなんかは、ちゃんと一音一音、演奏のとおりに指を動かしているし。
一体どれほどの手間と愛情を注いでこの作品が作られたのかと思うと、気が遠くなります。


東京では、もうそう長く上演しません。(詳しくは上のリンク参照)
もうね、とにかく観てください。一人でも多く。きっと好きになってくれると、思うなぁ。