実家の亀
もうかれこれ25年以上、実家の裏で元気にしている亀である。
好物は、ちくわだ。というか、ちくわしか食わない。間違いなく彼の(彼女かもしれぬ)全身は、ちくわで組成されている。
弟が命名したこいつの名は「永遠の光」という。
実はもう一匹、「火事場のクソ力」という名のもっと大きいやつもいたのだが(これも弟が命名)、その名の通りに、親戚の家からクソ力を発揮して逃走してしまった。あれは僕ら一家が、海外に行っている間だった。もしかすると、僕らを追って出ていったのかもしれぬ。今もどこかの空の下で元気にしているだろうか。
火事場のクソ力はペットショップで買ったものだったが、永遠の光は、ドブで発見され、拾われた。今考えると占有離脱物横領かもしれないが、それももう、時効であろう。
こいつの物言わぬ間抜けづらと、鷹揚そのものの動きを見ていると、実に癒される。俺は何をそんなに生き急いでいるのだろうと。
そんな彼は(彼女かもしれぬ)もう、立派なわが家族の一員である。もっとも、僕がちくわをやったことは、数えるほどしかないが。
これからも元気でいてほしい。
追記:
家族と亀の記憶を交換するうち、いくつか思い出した事実がある。
- 火事場のクソ力は、とんでもなくデカくて、顎も強かった。採ってきたザリガニなんかも、バリバリ食っていた。
- 火事場のクソ力は、よく甲羅の上に永遠の光を乗せていた。
- 永遠の光は、自転車に轢かれたことがある。
再追記:
永遠の光がオスなのかメスなのか、どうしたらわかるんだろう。