八甲田山死の彷徨 読了
- 作者: 新田次郎
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1978/02/01
- メディア: 文庫
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先日読んだ「指揮官の決断 八甲田山死の雪中行軍に学ぶリーダーシップ」以来、マイブームな八甲田山雪中行軍の遭難事件。
日露戦争前夜の明治時代。210人中199人が亡くなるという、この山岳史上最悪の遭難事件を題材に取り上げた小説がこれだ。映画「八甲田山」の原作でもある。
壮絶そのものの雪山の過酷な現実、そこで兵士たちが味わう地獄。その情景が映像として眼前に展開されるような迫真の描写に、胸がふさがって息ができない。なぜ第5部隊はほぼ全滅しなければならなかったのか。それは組織の横暴であり、雪山の恐怖への無知であり、観測史上最悪の気候という不運であった。対する第31部隊の生還。それは入念な準備であり、確固たる信念であり、ときとして苛烈ともいえるリーダーシップであった。
第31部隊の福島大尉に材をとった徳島大尉の酷薄さが印象的。現実はいざ知らず、小説内での彼は、案内人に対しては到底同情しがたい過酷な仕打ちをする。その印象は、先に呼んだ「指揮官の決断」から受けるものとは大違いだ。そのあたりの違いを楽しむのも、悪くない。
軍国国家としての明治時代の暗い一面、自然の猛威、人間の強さと弱さ、組織のあるべき姿、を克明に描き出した作品。これは読むべし。
映画「八甲田山」の方も一刻も早く観たいのだが、近くのレンタルにはなかった。こうなったら、渋谷のTSUTAYAあたりに入会するかなぁ。