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飲んだくれの記

方向音痴で熱しやすく冷めやすい、酒とラーメンの大好きなポンコツが綴る徒然の記。

八甲田山死の彷徨 読了

八甲田山死の彷徨 (新潮文庫)

八甲田山死の彷徨 (新潮文庫)


先日読んだ「指揮官の決断 八甲田山死の雪中行軍に学ぶリーダーシップ」以来、マイブームな八甲田山雪中行軍の遭難事件。


日露戦争前夜の明治時代。210人中199人が亡くなるという、この山岳史上最悪の遭難事件を題材に取り上げた小説がこれだ。映画「八甲田山」の原作でもある。


壮絶そのものの雪山の過酷な現実、そこで兵士たちが味わう地獄。その情景が映像として眼前に展開されるような迫真の描写に、胸がふさがって息ができない。なぜ第5部隊はほぼ全滅しなければならなかったのか。それは組織の横暴であり、雪山の恐怖への無知であり、観測史上最悪の気候という不運であった。対する第31部隊の生還。それは入念な準備であり、確固たる信念であり、ときとして苛烈ともいえるリーダーシップであった。


第31部隊の福島大尉に材をとった徳島大尉の酷薄さが印象的。現実はいざ知らず、小説内での彼は、案内人に対しては到底同情しがたい過酷な仕打ちをする。その印象は、先に呼んだ「指揮官の決断」から受けるものとは大違いだ。そのあたりの違いを楽しむのも、悪くない。


軍国国家としての明治時代の暗い一面、自然の猛威、人間の強さと弱さ、組織のあるべき姿、を克明に描き出した作品。これは読むべし。


映画「八甲田山」の方も一刻も早く観たいのだが、近くのレンタルにはなかった。こうなったら、渋谷のTSUTAYAあたりに入会するかなぁ。