飲んだくれの記

方向音痴で熱しやすく冷めやすい、酒とラーメンの大好きなポンコツが綴る徒然の記。

暗号解読 読了

暗号解読〈上〉 (新潮文庫)

暗号解読〈上〉 (新潮文庫)

暗号解読 下巻 (新潮文庫 シ 37-3)

暗号解読 下巻 (新潮文庫 シ 37-3)


先日読んだ、「ビッグバン宇宙論」の筆者(サイモン・シン)による、今度は暗号作成者と暗号解読者の3000年にわたる攻防を描いたドキュメンタリー。実際には、こちらの方が、ビッグバンよりも前の作品です。


期待通りの面白さでした。難しいことを信じられないほどに分かりやすく説明するだけでなく、暗号にまつわる人間ドラマにも大いにフォーカスして読者に感動を与える点は、この著者の他の2作品と同様です。


カエサル暗号、ヴィジュネル暗号といった歴史上大いに活用されてきた暗号の仕組みの記述は当然のことながら、その解読法が見つかるまでの過程を描いたドラマが特に素晴らしいです。解読法そのものの解説も非常に分かりやすく、「なるほど!」と思わずヒザをはたと打ちたくなりました。これなら、自分にもできそう。基本的な暗号解読の入門書の役割も果たしていると言えそうです。


インターネットを活用する我々にとって、暗号は無くてはならない存在です。ほとんどのネットユーザーは、自分でそれと知らずとも暗号を活用し、それの恩恵を得ているはずです。そうした事実や、そこに存在する危険や問題点についても、この本は啓蒙的な役割を果たしてくれるでしょう。


読了して特に印象に残ったのは、RSAに用いられた公開鍵の技術にまつわるエピソードで改めてわかった、国家機密機関による秘密主義の強力さです。今もどこかで誰かが量子コンピューターか量子暗号を実現しているかもしれない、にもかかわらず、僕らはそれを知りえない、という状況もありうるというのです。
もしたとえば量子コンピューターが実現されていたとしたら、僕らが今用いている暗号なんかは子供の遊び同然、すべての個人・法人・国家の情報は筒抜けになっていることすら考えられるということになります。
そうした状況に対して僕ら一般人が取りうる対策があるのかどうかまでは、この本には書かれていなかったようですが、ちょっと、問題意識としてとらえておきたいとは思います。