飲んだくれの記

方向音痴で熱しやすく冷めやすい、酒とラーメンの大好きなポンコツが綴る徒然の記。

シェルブールの雨傘 鑑賞

デジタルリマスター版による45年目の再演。シネセゾン渋谷にて。
ずっと観たい観たいと思いつつここまできて、とうとう観ることができました。


以下、あらすじ。まだ観てない方は、読まないことをお勧めします。


第一部:
フランスはシェルブール。傘屋の娘のジュヌヴィエーヴ(カトリーヌ・ドヌーヴ)、17歳。車の修理工のギイ、20歳。愛し合う二人が兵役で2年間の別離を余儀なくされる。悲嘆にくれる二人、そして別れ。
第二部:
ジュヌヴィエーヴの妊娠が発覚する。しかしギイの不在と音信の少なさから、お互いの愛に自信が持てなくなるジュヌヴィエーヴ。そんなとき宝石商カサールから求婚をされたジュヌヴィエーヴは、母親の後押しもあって、自分をありのままに受け容れてくれるカサールとの結婚を決意し、シェルブールを去る。
第三部:
徴兵から帰ったギイは、ジュヌヴィエーヴがすでに自分のものではないことを知る。自暴自棄になって仕事を辞め、売春婦とも寝るギイ。しかし自分の育ての親である伯母の死をきっかけに、彼女の面倒をずっと見てくれたマドレーヌが不可欠の存在であると気づき、彼女に求愛するとともに、自らのガソリンスタンドのビジネスを始める。
数年後。ガソリンスタンドを経営しつつ、幸せな生活を営むギイとマドレーヌ夫妻と一人息子のフランソワ。ギイが一人になった一瞬、偶然車を入れたのが、ジュヌヴィエーヴと娘のフランソワーズ。ギイとジュヌヴィエーヴ、つかの間の邂逅。「あなた幸せ?」「ああ、幸せだよ」。そして(おそらくは永遠の)別れ。FIN。


あの熱烈な愛は一体どこに?というシュール感は、フランス映画ならでは。そのはかなさが人生の真実であるということか。静かで美しく、余韻を残すラストシーンに、心が震えた。


とにかく絵が、色が、美しい。以下、強烈に脳裏に残っているシーン。
・オープニング。歩道を真上から撮影された通行人の色とりどりの雨傘の流れ。
・ギイの乗った列車を見送るジュヌヴィエーヴ。
ウェディングドレスを着たジュヌヴィエーヴが一瞬、カメラを見つめる様子。あるいは、冠を戯れにかぶせられた彼女がやはりカメラを見つめる一瞬。
・ギイ一家が幸せそうに雪と戯れるラスト


音楽。映画は観ていなかったのに、思い入れだけは強烈にあったミシェル・ルグランの「あの曲」だけでグッときた。オープニングや、別れを前にした愛のささやきのテーマとして用いられていたね。僕の中でこれに匹敵する映画音楽は、ニーノ・ロータの「ゴッドファーザー」、フランシス・レイの「男と女」くらいかなぁ。この映画がミュージカル形式であることにどれほどの必然性があったのかは今ちょっと分からないのだけれども、あの曲を切なく奏でるジュヌヴィエーヴの歌が、この映画に欠かせないことはたしかだ。


あともうひとつ、長回しのシーンが多いのには感心した。もっとも、セリフ(歌)はあとで重ねていると思うのだけれども。


観てよかった。