飲んだくれの記

方向音痴で熱しやすく冷めやすい、酒とラーメンの大好きなポンコツが綴る徒然の記。

冷たい密室と博士たち 読了

冷たい密室と博士たち (講談社文庫)

冷たい密室と博士たち (講談社文庫)


犀川創平と西之園萌絵の二人が活躍する、森博嗣氏によるミステリ、S&Mシリーズの第二作目。


前作「すべてがFになる」から一年後。創平と萌絵の二人が、親友の助教授に招待されて訪ねた先の研究所で、死体が発見される。そこは完全な密室状態だったはず。しかも彼らは直前まで実験しているところを目撃されていたのに・・・。いったい誰が、なぜ、どのように、こんなことをなしとげたのか!?
今回も、やる気があるんだかないんだか分からない創平の灰色の脳細胞*1がその威力をフルに発揮する。


今回も、トリックの緻密さにビックリ。もっとも僕は最近のミステリというものをあまり読んでないので、比較の観点からモノを言えないんだけれども。ただ、彼らの(犯人の)動機を状況証拠だけから、あれほどまでに想像することには無理がありすぎる。出来すぎ。
ストーリー展開には、中盤やや冗長さを感じる。対して、最後のまとめ方は見事(創平の語り口にはイライラしたが)。
大学のサーバー環境のセキュリティがザルなのには、時代を感じる。セキュリティ意識の高まった今これと同じことを書いたら、笑われてしまうだろう。10年という歳月で、かくも進化したこと自体が驚きであるわけだが。


僕が前作から違和感を感じていた創平の人格のエキセントリックさは相変わらずだが、どうやら、巻末の太田忠司氏の解説によれば、それは理系的人間には決して珍しくない属性であって、むしろ非常にリアリティのある描写であるということになるらしい。うーん。文系の(論理的思考が苦手で、感覚だけで生きているような)僕にはよくわからんわ。ただ、なればこそ面白がり珍しがって楽しめる(動物園を覗いているようなふうに)という側面はあるかもしれないな。


勧めてくれた会社の同僚によれば、これら森博嗣氏のシリーズを全部読み通すことで、初めて見えてくる(そして驚かされる)洞察があるという。全シリーズ読破って、一体あと何冊あるのか、考えるだけでうんざりしつつも、そんなエサをぶら下げられてしまっては、僕はもう引き下がれない。さて、第三作目は明日にでも書店で買ってくるとしよう。

*1:こんな表現は原作ではなされていない。念のため