飲んだくれの記

方向音痴で熱しやすく冷めやすい、酒とラーメンの大好きなポンコツが綴る徒然の記。

地球の長い午後 読了

地球の長い午後 (ハヤカワ文庫 SF 224)

地球の長い午後 (ハヤカワ文庫 SF 224)


おそらくは数億年後の地球が舞台。すでに太陽は老年に達し、地球は自転を止めた。そこでは動物のように進化した植物が、わがもの顔に地表を占領しており、一部は月面にさえ到達している。そんな中、クマバチやアリなどのごく一部の動物とともにわずかに生き残った人類は、極度に退化した姿で、地上でもっとも弱い存在として、少人数のグループごとに、死と隣り合わせの命がけの生活を営んでいた。そんな中のひとり、相対的に賢い知恵を授かった少年、グレンの冒険が始まる。


次々に現れる大胆な設定を、しかも目の前に立ち現れてきそうなほど緻密に描いた、想像力の極北のような作品。夢中で一気に読んでしまった。われわれ人間の脳は実は○○○だった!という、驚天動地の設定も面白い。時折訪れる悲しい別れも、彼らの倫理観では必ずしもそうはならない。そうした我々との考え方の違いを、読者の共感を得られるギリギリまで大きくすることで、異世界としてのリアリティを持たせようと頑張っているのがよくわかる。


ラストは比較的おとなしいが、なかなかの秀作。個人的に大好きとは言いかねるので、あえて傑作とは言わないが、客観的にみれば間違いなく傑作の域。


正直、書店でこの本を見るまでは、作者のブライアン・W・オールディスも、この「地球の長い午後」も知らなかった。ただハヤカワ文庫の「SF&ファンタジイ・フェア2008」のお勧めとしてこの書があげられていたのを契機に、出版社の策略に乗るのも悪くない、と手に取ったまでだ。でもおかげでいい作品にめぐり合えたのだから、このフェアには大感謝だ。未読のもの(かなりの数だ)は、これを機に全部読もうかとも思っている。


フェアの内容は、こちら↓
http://www.hayakawa-online.co.jp/images/news/SFFantasyFair.html