飲んだくれの記

方向音痴で熱しやすく冷めやすい、酒とラーメンの大好きなポンコツが綴る徒然の記。

自虐の詩 鑑賞

「日本一泣ける四コマ漫画」で有名な原作漫画の映画化。結局劇場で観るチャンスを逃してしまい、ようやくDVDで観ました。


漫画はこちら。
自虐の詩 (上) (竹書房文庫ギャグ・ザ・ベスト)
自虐の詩 (下) (竹書房文庫ギャグ・ザ・ベスト)


正直、前半は退屈そのもの。意味の分からない特撮でのちゃぶ台返しとか、微妙過ぎるギャグとか、こりゃー無いわ、と思いながら観ていた。


・・・が、後半でキた。幸江が大怪我して、過去の回想が本格的に始まるシーンから。正直、原作ほどの細かい不幸エピソードの積み重ねが無いので、その分薄っぺらいのだけれども、それでもキた。熊本さんサイコー。子役の幸江もハマり役。気がついたら、ポロポロ涙がこぼれてたよ・・・。(ただ、感動のポイントは原作と映画とで、かなり異なる。)


原作を知らずにこの映画だけをみると、凡百のドラマとあまり変わらないのではないかとの危惧もあるが、原作ファンとして振り返ってみると、まぁ、最高からは程遠いにしても、そう悪くないデキだったのではないかと思う。


不満があるとすれば、やはりディテール不足なこと。映画の時間幅でやろうとしたら仕方の無いことは分かっているのだけれども、それでも残念。子供時代の幸江の不幸の元凶であった父親のクズ人間ぶりがあまり描かれてなかったし、同級生のマドンナ、藤沢さんとの付き合いの変遷(三角関係とか)も是非とも描いて欲しかった。あえて言ってしまえば、悲惨さが足りないのだ。あまりのことに笑ってしまうほどの、怒涛の不幸ぶりが。それがあってこそ、熊本さんとの再会で大号泣できるのに。


ただこの映画、役者陣は素晴らしかったと思う。幸江役の中谷美紀が美人過ぎるのは大目に見るとしても、演技はかなりいいし、阿部寛も見た目がクリソツなうえ、無口ぶりもグッド(ただ、若いときの長髪、ありゃないわー)。でももっとよかったのは、カルーセル麻紀と、遠藤憲一。特に遠藤憲一のあさひやマスターは、そのまま作中から飛び出してきたようなハマリ役。そして文句無しなのは、やはり子役の熊本さん。何度言っても言い足りないくらい、そのまんま。もっともっと作中で活躍して欲しかったな。


最後にもう一度。
この映画だけで、あの素晴らしい原作漫画を分かった気にならないで欲しい。くだらなすぎるエピソードを積み上げて積み上げて、一気に強引に号泣ラストに持っていくあの4コマの凄みは、実際に体験してもらわなければわからない。むしろ、映画を観る前に、いや、映画はたとえ観なくても、一度は読んでみて欲しいよ。今は文庫版で手に入ることだし。