飲んだくれの記

方向音痴で熱しやすく冷めやすい、酒とラーメンの大好きなポンコツが綴る徒然の記。

限りなき夏 読了

限りなき夏 (未来の文学)

限りなき夏 (未来の文学)


日本では明らかに「遅れてきた」作家であると思われるクリストファー・プリーストのベスト短編集。このブログでも何度も取り上げてますが、今では「魔術」「奇術師」「双生児」のヒットで、SFファンで知らぬ者はない存在である彼の、満を持して発売された作品集です。


2,400円もするハードカバーなのに、どこの本屋でも店頭に山積みされているあたり、いかに彼の人気が高いものであるかが伺われますね。
僕も図書館で借りたり文庫化を待つべきかどうか、店頭で大いに悩みましたが、ダメだ、今読まなきゃもう我慢できない!との思いから、半ば衝動的に買ってしまいました。


途中中断していたために、読むのにちょっと時間がかかってしまいましたが、いやはや、なかなかに素晴らしい作品群です。
作品によって書かれた時期が色々であるため、その作風が時代に応じて大きな変遷を見せていることがよくわかりますが、基本的に長編で彼が見せる手法は短編でも健在。日常の光景に突然SF的ガジェットを挿入することによる強烈な違和感、読者をアッと驚かせる騙りなど。内容はファンタジー、SF、ホラー、それらのいずれでもあり、その混交です。


個人的には、美しくも哀しい恋物語「限りなき夏」と、得体の知れない焦燥と恐怖に満ちたホラー「火葬」、そして見事に騙りにやられた「奇跡の石塚」が好き。もっともSFらしい「青ざめた逍遥」も悪くないな。


訳者あとがきによれば、今はプリーストの長編 The Affirmation の翻訳準備中であるようだ。楽しみだ。早く出ないかなぁ!