飲んだくれの記

方向音痴で熱しやすく冷めやすい、酒とラーメンの大好きなポンコツが綴る徒然の記。

プレステージ

劇場では観られなかったので、このたびようやくDVDで鑑賞。


舞台は19世紀。ヒュー・ジャックマンクリスチャン・ベールが、生涯の敵でありライバルでもある二人の奇術師を力演します。


原作を知っている目でみると、途中でタネがわかります。映画向けに大きく翻案された作品ですが、その部分だけは、原作に忠実。でも、この映画で初めてこの作品に触れる方は、そのトリックに唖然呆然とするんじゃないかな。


奇術師として人を驚かせることにとりつかれた二人に、真の幸せはありません。その情熱とライバルに対する憎悪は、本人も愛する人々も不幸にするばかり。その悪夢的な憎しみの連鎖が、なんともいえない悲しみの(そしてかなりの嫌悪感の)余韻を残します。


ブリティッシュな役柄にぴったりのヒュー・ジャックマンと、マイケル・ケインの演技は、よかった。クリスチャン・ベールは、怪しさは満点なんだが、どうにも19世紀の香りが感じられなかったのは、僕だけか。


駄作として切り捨てるには、頑張りすぎている。でも、サプライズの快感よりも嫌悪感をより強く印象付けるこの作品を一級品とは言いたくない。


僕としては断然、以下のクリストファー・プリーストによる原作(「奇術師」)を映画よりも先に読まれることをお勧めしたい。数年前、何も知らずにこれを読んだときは文字通り、その「語り=騙り」のうまさにひっくり返ってしまい、以来プリーストの翻訳は全部読んでます。


そういえば僕が先日熱狂したプリーストの「双生児」は案の定、最新版の「SFが読みたい!」の海外編1位になってました。
「奇術師」でもいかんなく発揮された騙りの手法は、「双生児」においてさらにパワーアップして、爆発してましたからねぇ。これも読んでほしいなぁ。

http://nununi.net/pages_b/writers_etc2.html

SFが読みたい!〈2008年版〉発表!ベストSF2007 国内篇・海外篇

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双生児 (プラチナ・ファンタジイ)

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