飲んだくれの記

方向音痴で熱しやすく冷めやすい、酒とラーメンの大好きなポンコツが綴る徒然の記。

航路 読了

航路〈上〉 (ヴィレッジブックス)
航路〈下〉 (ヴィレッジブックス)

コニー・ウィリスによるミステリー巨編。2003年度版《SFが読みたい!》海外SF部門第1位の作品。

認知心理学者のジョアンナは、デンヴァーの大病院にオフィスを持ち、朝はER、午後は小児科と、臨死体験者の聞き取り調査に奔走する日々。目的は、NDE(臨死体験)の原因と働きを科学的に解明すること。一方、神経内科医のリチャードは、被験者の脳に臨死体験そっくりの幻覚を誘発する薬物を発見し、擬似NDEを人為的に引き起こしてNDE中の脳の状態を記録するプロジェクトを立ち上げ、彼女に協力を求める。
だが、実験にはトラブルが続出し、やがて被験者が不足する事態に。こうなったら自分でやるしかない。ジョアンナはみずから死を体験しようと決意するが・・・・・・


臨死体験とは何か。ちまたに流布するニセ科学に対する嫌悪感を明らかにしつつも、これに対して一つの解答を与えた作品。
ややまったりとした展開のどたばたコメディータッチの前半、予想もしなかった衝撃の第二部ラスト(下巻の半ば)の展開、そして感動のラストへの突入。
いかにも女性作家らしい細やかな心理描写、一人も無駄の無い魅力的なキャラクター群、流れるようなストーリーテリング、各所に散見されるウンチクの面白さ。いずれも素晴らしい。感涙必死と言われるが、僕は二部ラストでグッときた。ラストは・・・うん、まあまあかな。


宮部みゆき氏や瀬名秀明氏ら、多くの作家が推薦しているらしい本作。SFとして捉えるとやや道具立てに物足りない部分もあるが、ジャンルにこだわってあれこれ言うのも、ナンセンスかもしれない。読後の満足感は大きい。お勧め。


参考:
コニー・ウィリス日本語サイト(訳者の大森氏による)
http://www.ltokyo.com/ohmori/willis/