飲んだくれの記

方向音痴で熱しやすく冷めやすい、酒とラーメンの大好きなポンコツが綴る徒然の記。

ロング・グッドバイ 読了


話題の村上春樹訳。僕にとってはこれが、初めてのレイモンド・チャンドラーであり、初フィリップ・マーロウであった。


私立探偵フィリップ・マーロウと富豪の娘婿テリー・レノックスとの偶然から始まった友情は、テリーの妻殺害と、テリー自身の逃走と自殺で終わりを告げた。そんな中、マーロウはもう一組の不幸な夫婦の事件に巻き込まれる。そこを通じてやがて明らかになる、テリーの過去、人間関係。体を張って友人の自殺の真相に迫った結果、最後にマーロウの前に現れたのは・・・


文体はひたすら硬質。マーロウはよく殴られ、こづきまわされつつも、自身は大変な身体能力と毛の生えた心臓を持ったタフガイだ。彼は何よりも自分の信念を大切にし、そこから逸れたことは絶対に選択しない。
ストーリーとしては、その哀愁漂うラスト(まったく予想していなかったので驚いた)に、大いに引き込まれた。しかし、なんだろうこの違和感。僕はこれが、どうも訳文からくるような気がしてならない。会話の座りの悪さというか、テンポのズレというか・・・
あと、このマーロウという男の行動原則がわかるようなわからないような。なぜここでわざわざ相手を挑発する!?という場面がたびたび。読んでいて思わずしかめっ面をしてしまう。あるいは、その不器用さがまた魅力なのかもしれないが。


結局どうにも引き込まれきらず、なんども中断しながら読んだだめに、読了までものすごく時間がかかってしまった。書店のポップでは、徹夜必至!みたいな煽り文句が書かれていたにもかかわらずだ。毎日、この分厚い本を持ち歩くのは大変だったよ。


しかしまぁ古典として名高い作品でもあるし、もう少しレイモンド・チャンドラー作品を読んでみたい気持ちは刺激された。で、今日書店に寄ったら、村上春樹訳のフィリップ・マーロウものが、もう一つ出ていたのを発見。

さよなら、愛しい人

さよなら、愛しい人


つまりは、清水氏による「さらば愛しき女よ」の、春樹版。この作品もぜひとも読んでみたいだが、どちらで読むべきか・・・非常に悩ましいところだ。邦題のセンスで選ぶなら、迷うことなく清水氏の方を手に取るのだが。