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飲んだくれの記

方向音痴で熱しやすく冷めやすい、酒とラーメンの大好きなポンコツが綴る徒然の記。

四畳半神話大系 読了

四畳半神話大系 (角川文庫)

四畳半神話大系 (角川文庫)


傑作だ!


僕の中では、同じ森見作品の「夜は短し歩けよ乙女」と拮抗するほどに。


太陽の塔」と傑作「夜は短し歩けよ乙女」との間に書かれた、著者第二作。
4編のパラレルな物語からなる長編。いずれの物語においても、主人公は京大三回生。この二年間を、本人曰く、棒に振ったことを呪わしく思っている。そして彼は回想する。初々しい一回生だったときの、あの選択の過ちを・・・。


4編の物語は、そのときに異なった選択をすることで分岐する。ひとつは映画サークルへの加入、ひとつは樋口師匠の弟子になること、ひとつはソフトボールサークルへの加入、そしてもうひとつは秘密結社に加入した場合。
いずれの物語においても、八面六臂の活躍をする悪友・小津、いつもクールな黒髪の乙女・明石さん、謎の男・樋口さん、酔うと男の顔を舐める美女・羽貫さんといった登場人物は同じだが、それぞれの役割や絡み方が異なってくる。すべての物語が、森見作品らしいにぎやかさとバカバカしさ、ほほえましさ、そして抑えがたい若さのエネルギーに満ち溢れており、それは主人公が自虐的に語るほどには不毛でもつまらなくもない。むしろそこに描かれているのは、うらやましいほどに多様でスリリングな青春だ。
二話目、三話目と、コピペと微妙な改変とを加えつつ、変奏曲のように繰り返し提示されるモチーフは、四話目のSF的転回によって見事にその全貌を明らかにする。この遊び心に満ちた実に楽しい構成は、読み始めのときには予想もしなかっただけに、驚きとともに、ほのかな感動すら読者に与えてくれる。


屈折と鬱屈した知性を秘めた語り口は、相変わらず読者を選ぶと思うし、また一般受けこそ「夜は短し歩けよ乙女」にかなうことは絶対にないと思うが、全体構成の見事さ、文章テクニックなどにおいては、僕はこれこそが最高傑作ではないかと思う。広くお勧めしたい。


18日読了。