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飲んだくれの記

方向音痴で熱しやすく冷めやすい、酒とラーメンの大好きなポンコツが綴る徒然の記。

独白するユニバーサル横メルカトル 読了

独白するユニバーサル横メルカトル (光文社文庫)

独白するユニバーサル横メルカトル (光文社文庫)


このミステリーがすごい!」2007年度版 第1位、という帯の言葉だけを頼りに手に取ったもの。ミステリーとSFの中間に位置する短編集。


率直に言うよ。最初の作品を読んで、あまりの醜悪さに、読むのを止めようと思った。
でも以後の作品では、作者の力量に、うならざるを得なかった(三作目は一作目同様、吐き気を催したが)。好きにはなれないが、参った。感心した。1位獲得も、むべなるかな。


解説でも言われてしまっているが、いくつかの短編集は、それぞれに原形とも言うべき作品を他に見出すことができる。「オペラントの肖像」は「1984」、「すまじき熱帯」は「地獄の黙示録」、など。「Ωの聖餐」の、○を食うとこうなる、というモチーフは無数のSFに登場するし。これらの作品では、読者はある程度余裕を持って「ああ、なるほど。やっぱそうくる?」などと接していられる。
そんな中、凄いなと思ったのは表題作。「独白するユニバーサル横メルカトル」の主人公は、なんと、地図!ともかくもその設定と表現の俊逸さに、びっくり仰天だ。
さらに、暴力的描写とSF的筋立て、詩情あるストーリー性とが一体となって語られている、それまでの収録作のいわば総集編ともいうべき「怪物のような顔の女と溶けた時計のような頭の男」。哀しき余韻を残す本作は、なかなかの名作ではないかと思う。


豊潤な語彙の使いこなしと、時折、言葉遊びなどに現れるユーモア(しょーもない駄洒落含め)、読んでいて背筋が寒くなるほどに徹底した暴力描写、そして分かりやすくしっかりしたオチ、などが作者の特徴。あまりの鬼畜ぶりに、誰にでもお勧めできる作品集ではないが、ある程度の覚悟を持って対峙すれば、嫌悪を超えた先になかなかの読後感が待っていることは間違いない。