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飲んだくれの記

方向音痴で熱しやすく冷めやすい、酒とラーメンの大好きなポンコツが綴る徒然の記。

ひとめあなたに… 読了

ひとめあなたに… (創元SF文庫)

ひとめあなたに… (創元SF文庫)


あたし昨日、振られた。ここんとこ、なんか様子がおかしいと思ったら。朗 ― それが彼氏の名前なんだけど、彼、末期癌でもう長くないんだって。それで、振られた。もっといい人探せって。あたし、荒れた。飲みまくった。こんなに好きなのに、なんで・・・
気がついたら朝。テレビでなんか叫んでる。隕石が地球に向かってるんだって。一週間後に地球に激突、人類は絶対に助からないって。・・・ええっ!?あたしたちみんな、死んじゃうの?
・・・決めた。あたし、朗のうちまで歩いてく。あたしんちは江古田、朗の家は鎌倉。どうせ死ぬなら、最後、ひとめあなたに会うために・・・


・・・とか、ちょっと新井素子を真似てみたが、ちょっと無理があった。ファンから石が飛んできそう。


ともあれ、まぁ、そういう小説だ。パニックの中、主人公が江古田から鎌倉まで歩いていく。描かれているのは、様々な境遇の女たちが狂っていくさま。主人公は最初と最後以外は、その狂言回し。
本作は、SFではない。テーマは、生と死、夫婦、親子、そして、愛。変化球型の恋愛小説だ。話し言葉そのまんまの文体が、25年前の当時は鮮烈であったようだ。今だと、ライトノベルや携帯ノベルがこの直系なのではないかな。
食人も含むかなりスプラッタな描写があり、これはなかなかに強烈。かつての筒井康隆を髣髴させた。


作者20歳の頃の作品という。狂う女たちや主人公の考え方の中に、いかにもそれらしい、みずみずしい感性(つたなさも伴って)が見て取れる。
まさに、その時期ではないと書けないような小説だ。


不満があるとすれば、以下の点か。

  1. 女の充実ぶりに比べ、男の描き方が平板そのもの。話し方、考え方、反応。まるで人形のよう。
  2. 世界中がパニックに陥っているはずなのに、2日経っても自販機で冷えたコーラが買えることの非現実性。誰がこんなときに発電所で働き続けているのだ?コーラ缶は誰が補給しているのだ?
  3. 東京には、もっと人間がいる。25年前とはいえ、主人公が通ってきた道の混雑・混乱は、こんなものではないはずだ。


ただ、これが恋愛小説であると考えれば、そんなリアリティの追求などは野暮なだけかもしれない。


今回のこれは、会社の同僚(女性)が、20年前に読んでショックを受けたというので、手に取ったもの。読了は19日。