飲んだくれの記

方向音痴で熱しやすく冷めやすい、酒とラーメンの大好きなポンコツが綴る徒然の記。

バビル2世 1巻〜12巻

バビル2世 文庫版 全8巻セット

バビル2世 文庫版 全8巻セット


僕らの世代で知らない者はない(よな?)「バビル2世」。これがYahoo!プレミアム会員であれば全巻PCで立ち読みできるというので、なにげなく読み始めたところ、もう止まらない。結局全巻一気読みしてしまった。


期間限定ですが、以下のリンクから読めます。
http://comics.yahoo.co.jp/premium/ikkiyomi/


本作のストーリーは、簡単に言えばこういうことだ。

普通の高校生だった浩一はあるとき、まもなく誰かが自分を迎えにくる夢を見る。その夢は日に日に大きくなり、やがて、本当に空から怪鳥が迎えにやってくるときがやってきた。彼は両親に別れを告げ、怪鳥によって砂漠の中、砂嵐に隠されたバベルの塔に連れてこられる。
そこで真実を告げられる浩一。彼は5000年の昔に地球に不時着した宇宙人、バビルの末裔であったのだ。5000年のときを経て、バビルの持っていた超能力に目覚めた彼は、バビル2世となって、バビルの遺産(フルコンピューター化されたバベルの塔と、三つのしもべ)を引き継いだのだった。
彼は訓練を経て、短期間の間にあらゆる超能力を操る異能者へと進化する。そのさなか、彼は終生のライバル、ヨミと出会う。ヨミは世界各所に要塞を建築し、そのカリスマと力に従う多くの部下を従えて、世界征服をたくらんでいた。バビル2世は、彼と戦い、滅ぼすことを決意する。ヨミもまた、バビル2世が自らの野望の最大の障害であることを知り、彼を滅ぼすために全力を尽くすことを誓う。ここに、バビル2世とヨミとの、長年にわたるバトルが幕を開けるのだ。

あとはひたすら、バビル2世とヨミとの戦い。ヨミは3度命を落とし、4度負ける。


読みながらずっと不思議に思っていたのは、この作品の、どこに僕らはひきつけられたのだろうか、ということ。


が、実はその答えを僕は持っている。この作品は、ヨミが事実上の主人公なのだ。
僕らは、孤独で負けをほとんど知らず、バビルの遺産である3つのしもべ(ロデム、ロプロス、ポセイドン)に頼る“勝ち組”バビル2世にはあまり共感しない。その彼の能力の強大さを認め、嫉妬し、何度失敗し、倒されながらも、あきらめることなく手を変え品を変えて、不利な境遇の中、部下たちと一体になって必死に目的を達成しようとするヨミこそ、僕らは激しく応援したくなる。たとえその目的が世界征服であったとしても。その彼がラスト、いよいよ矢尽き刀折れたとき、いさぎよく敗北を認め、静かに死を選んで北海に沈んでいく様子は、涙なくしてみられない。
そこが、この作品の強烈な魅力なのだ。


勧善懲悪がヒーローものの王道であるが、その善と悪とが、所詮は相対的なものであることに、ぼんやりと気づかせてくれたのがこの作品。この男前な物語に、コドモの頃に出会えたことは本当によかった。横山先生ありがとう。(ちなみに、ウルトラセブンあたりも同様の気づきを得られる話が多かった気がするな)


ちなみに僕が小学生のときに読んで一番ショッキングだったのは、11巻の「外伝」だった。何故何の罪も無い彼が死なねばならなかったのか、あまりに不条理に思えて、後年までかなりトラウマチックに記憶から離れなかったことを覚えている。


ところで、終生のライバル、ヨミ亡き後のバビル2世は、一体何を支えに生きていったのだろう?さぞ、つまらぬ人生であったろうに・・・