容疑者Xの献身 読了
- 作者: 東野圭吾
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2008/08/05
- メディア: 文庫
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泣いた。
読み終わったのは、通勤電車の中。衆人環視の中、涙が出そうで、でもグッとこらえるのは大変だった。その後も丸一日、ラストシーンが頭にこびりついて離れない。
レイクサイドを読んだときに書いたのだが(なんと2年以上前だったのか!)、東野作品は人物描写が紋切り型で、描かれた人に陰影が感じられないように思っていた*1。そしてそれは正直、本作においても例外ではなく、そのためもあって、前半部分はやや辟易しつつ、あまり身を入れずに読んでいたように思う。
でもそんなの、どうでもよくなった。後半部の、驚愕のアイデアの前では。
湯川が靖子を前にして話し始めて以降の怒涛の展開に、意味もなく「ごめんなさいごめんなさい」と謝りたくなっている自分がいた。そしてあのラストシーン。あまりにもイマジナブルで悲劇的なアレは、誰だって映像化したくなるんじゃないか。もう、見事のひとこと。
僕は本作のどこに涙したのだったか。おそらくそれは石神の深い愛情表現に対してというよりは、むしろ靖子の、否応無く運命の渦に巻き込まれ、それに抗うことのできない行き場のなさからくるやるせなさ、動き始めた歯車をどうすることも出来ないながらもそれを受け入れざるを得ないその哀しさであった。最後の靖子の絶叫が、耳にこだまする。
マイミクさんの日記でお勧めされていたことから、何気に書店で手に取った本書。出会えてよかった。彼女にはこれまでも沢山いい作品を教えてもらっているけど(というか、ほとんど僕が勝手に読み取ってるだけか)、いつもハズレがない。その感性、信頼してます。も少し、他の本も真似して読ませていただきますが、ご容赦を。そして、ありがとう。
*1:今にして思えば、わずか二作しか読まずにそう決め付けてしまうのも不遜かもしれないが