飲んだくれの記

方向音痴で熱しやすく冷めやすい、酒とラーメンの大好きなポンコツが綴る徒然の記。

ストーカー 読了

ストーカー (ハヤカワ文庫 SF 504)

ストーカー (ハヤカワ文庫 SF 504)


ストーカーといっても、毎日のようにニュースに登場するアレではない。異星の存在が地球に残した”何か”(地球ではそれをゾーンと呼ぶ)に不法侵入して、そこにある遺物を盗掘し売りさばく、一獲千金を夢見る男たちの職業のことだ。
ゾーンは地球人にとってはきわめて危険な存在で、そこで巻き起こる超常現象は不気味かつ凶暴、そしてまったく理不尽。男たちは次々に、いとも簡単にそこで命を落とし、あるいは身体を損なっていく。ストーカーとは、そこできわめて少数しか生き残ることの出来ない命がけの仕事なのだ。


本作では、異星の存在がいかなものであるのか、まったくその答えが明かされることはない。というか、地球人にはまったくわからないのだ。いったい誰が、どのような目的で、何を地球に残していったのかが。こうした、理解を拒む存在とのファーストコンタクトものとしては、同じ東欧の巨匠、レムの「ソラリス」に通ずるものがある。本作でもソラリスでも徹底して描かれるのは、そうした立場に立たされ、困惑し、あるいは受け入れ、あるいは拒絶しつつ、必死にもがく人間たちの姿だ。そのリアリティは、異星の文明との理解可能性を前提とした能天気な宇宙SFをはるかに凌駕する。僕はこういうSFが、たまらなく好きだ。


とにかくハードボイルドでドライ。無様なのにカッコいい。傑作。