飲んだくれの記

方向音痴で熱しやすく冷めやすい、酒とラーメンの大好きなポンコツが綴る徒然の記。

フラッタ・リンツ・ライフ 読了

フラッタ・リンツ・ライフ―Flutter into Life (中公文庫)

フラッタ・リンツ・ライフ―Flutter into Life (中公文庫)


スカイ・クロラ」シリーズもこれで4作目。


本作ではあのクリタ・ジンロウが「僕」だ。彼もまた、キルドレとしての生の希薄さを身にまとい、空と死にあこがれる存在。


娼婦のフーコの元に通い、死んだ同僚の恋人・相良に惹かれ、上司である草薙に自分でもそれと意識しない思慕の情を抱く彼は、しかし、これまでの「僕」よりもずっと「普通」な感じを漂わせており、それが僕ら読者の共感を呼ぶ。


これまでの「僕」たちとは違う視点からの語りは、この世界への理解を深める助けとなる。その後の草薙がどのように自分と折り合いをつけて生きてきたか。彼女を取り巻く環境がどう変化してきているか。徐々に明らかになる謎。決して語り過ぎない、しかし真実のありようをほのかに漂わせる構成の絶妙さ。上質のミステリーを読むようだ。


さて、次は最終巻「クレイドゥ・ザ・スカイ」。