飲んだくれの記

方向音痴で熱しやすく冷めやすい、酒とラーメンの大好きなポンコツが綴る徒然の記。

神話と意味 読了

神話と意味 (みすずライブラリー)

神話と意味 (みすずライブラリー)

構造主義から現代にいたる思潮を知りたくて、まずは構造主義の始祖とも言われる人類学者、レヴィ=ストロース*1の著作を漁ってみることにした。


・・・のだが、ヘタレな僕は、5,040円もする大部な「野生の思考」を前に書店で思わず躊躇してしまったのだった。何の予備知識もなしに果たしてこれを噛み砕けるのだろうか、と。門前払いを食わされて、こいつも埃をかぶっておしまい、がオチではないかと。


そこでさんざん書店をウロウロして見つけたのが、このレヴィ=ストロースによるラジオ連続講話集。
ここでレヴィ=ストロースは、とんでもなく明確かつ平易な文章で(おそらく翻訳もいいのだと思う)、構造主義とは要するに何であるのか、科学的思考と神話的思考との関係、爾来、「原始的」と言われてきた文明が実際には実利を離れた、時として知的な思考をなしうること、などなどを説いてくれる。この平易さは、フランス人の彼が、自国語ほどには流暢でない英語で講演したことにも由来するようだ。そして要所要所に挿入される彼自身のエピソードが彼の人柄や、その考えが生まれた必然性を感じさせてくれて、この書を非常に親しみやすいものとしている。
この書の中で彼が「神話の中にみる、双生児の特殊性と、兎唇と双生児との関係性」を説くのだが、まだ僕にはここに見られる考え方が飛躍的でアクロバチックなものであるという印象を拭えないこともまた事実。ただその説得性を、この小品に期待するのは過酷というものではないか。今後彼の著書をひもといていくことで、徐々に理解できるようになることを期待しよう。


まだレヴィ=ストロースの思想の全貌を理解していない僕がこの本の位置づけを云々することなどできようはずはないけれども、少なくとも、彼の思想のエッセンスの一端は味わうことができたと信じている。なんかこう、久々に大当たりな感触の本であった。


まずはこのままレヴィ=ストロースと、「一般言語学講義」のソシュールレヴィ=ストロースも彼からの影響をこの本で認めている)あたりを攻めて行こうと思ってます。その方法論としては、決して他者による「入門書」から入ることなく、徹底した原典主義で(つっても翻訳だけど)*2

*1:ほぼ同じスペルの、ジーンズで有名なリーヴァイ・ストラウスの遠縁にあたるそうな

*2:もっといえば、ソシュールに本当に意味での「原典」は無いらしいけれども