双生児 読了
やべえよ、すげえよ。
ここ半年、いや一年くらいで読んだ作品中、ベストかも。
読んでる間、とめられない、眠れない。昨晩はあやうく徹夜するところだった。
- 作者: クリストファープリースト,Christopher Priest,古沢嘉通
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2007/04
- メディア: 単行本
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1999年英国、著名な歴史ノンフィクション作家スチュワート・グラットンのもとに、第二次世界大戦中に活躍した空軍大尉J・L・ソウヤーの回顧録のコピーが持ちこまれる。グラットンは、次作の題材として、第二次大戦中の英国首相ウィンストン・チャーチルの回顧録のなかで記されている疑義―――英空軍爆撃機操縦士でありながら、同時に良心的兵役拒否者であるソウヤーなる人物(いったい、そんなことが可能なのか?)―――に興味をもっており、雑誌に情報提供を求める広告を出していた。ソウヤーの回顧録を提供した女性アンジェラ・チッパートン(旧姓ソウヤー)は、自分の父親は第二次大戦中、爆撃機操縦士を務めていたと言う。果たして、彼女の父親はほんとうにグラットンの探しているソウヤーなのだろうか?
作家の棲む現実から幕を開けた物語は、ジャックとジョーという同じイニシャル(J)をもった二人の男を語り手に、分岐したそれぞれの歴史の迷宮をひたすら彷徨していく・・・・・・。
一卵性双生児の片割れ、ジャックの回顧から始まる物語。それ自体が恋と冒険に満ちた激しい物語で非常に引き込まれるのだが、その後から雲行きがおかしくなってくる。そこで展開されるのは、相互に矛盾する二つの事実と歴史。一体何が真実なのか?誰が本当のことを語っているのか?さながら映画「羅生門」のごとき状態。疑心暗鬼の中、それでも興味深い物語を夢中で読み進めて行くと、最後にやがて見えてくる、この作品の全体構造。僕はこれが浮かび上がってきたとき、全身鳥肌が立った。
「語り」と「騙り」の天才、プリーストの面目躍如。是非ともみんなにも、幻惑されてほしい。
ネタバレは、大森望氏によるあとがきでバッチリ書かれてしまっているので、読んでいて分からなくなっても心配ない。というか、ネタが分からなくても、十分すぎるほどに、面白いのだし。
ただ一つだけ、これから読む人にアドバイスするとしたら
登場人物の名前は覚えておけ
ということかな・・・
作者のクリストファー・プリーストのことは、このブログでも言及したことがあったように思う。僕の場合はまず「奇術師」でガツンと脳天をやられ*1、「魔法」で煙に巻かれて、「逆転世界」の奇想とリアリティに幻惑された。そしてこの「双生児」で、彼は間違いなく、僕の中でベストな作家の殿堂入りを果たしてしまった。
ちなみに、クリストファー・プリーストの公式サイトは、ここらしい。
The Prestige
あとがきの大森望氏によれば、ここのページ内にある
Reading in a War
というエッセーが、面白いようだ。「双生児」を書くにあたって、プリーストが参照した約120冊の本(そのうち60冊は、メモを取りつつ、はじめから終わりまで読んだという)のうち、主だった本をレビューしたものである模様。たしかに自分の地平を広げるネタが沢山転がっていそうで、大変興味深い。時間をとって、読んでみよう。