飲んだくれの記

方向音痴で熱しやすく冷めやすい、酒とラーメンの大好きなポンコツが綴る徒然の記。

甘い追憶 鑑賞

「甘い追憶」、Bunkamura ル・シネマで観てきました。
生涯に出演した映画は160本余り、イタリアが世界に誇る名優マルチェロ・マストロヤンニのドキュメンタリーです。


ほれぼれするようなイイ男ですな・・・


今は亡きマストロヤンニ自身が生前に語った自分、映画、役者という職業、愛、などのインタビューや出演作の断片を軸に、そうそうたる顔ぶれの監督(フェデリコ・フェリーニルキノ・ヴィスコンティジュゼッペ・トルナトーレ、ピエトロ・ジェルミ、などなど)や女優、スタッフ、そして実の娘たちが語るマルチェロの素顔についての映像を散りばめた作品でした。


怠け者で天才、隠れた努力家、内気で電話魔、謙虚、毒舌家、知的な皮肉屋、など、様々な人が語るマルチェロ像はあまりにも多様で、それはときに相互に矛盾するようにすら感じられます。しかし、ある人を「この人はこういう人だ」などと語ることなど、他人に(いや、自分にすら)できようはずがないですよね。観る人様々な印象を持ち帰る、それでいいんじゃないでしょうか。
ただ一つ言えるのは、さほどマルチェロの映画を観ていたわけでもない僕のような人間にも、彼をもっと知りたい、彼の出演作をもっと観たい、と思わせる、それだけの魅力ある人間像をこの映画は描き切っていたということです。


映画そのものの進行は実に淡々としていて、起承転結もさほどないままにスーッと終わっていきます。人によっては、これを退屈ととるかもしれませんね。でも、なんでかなぁ、僕は本当に強く引き込まれました。この映画をもう一回で連続観ろと言われたらちょっと苦痛かもしれないけど、これからマルチェロ出演作を何本か観て、その後、またこの映画に帰ってきたいとは思う。そのときはきっと、新しい発見があるに違いない。そういう意味では、映画をより楽しむための映画であったと言えるのではないかと思うんです。


個人的には、自分の地平を広げる契機を与えてくれる、忘れられない作品になりそうです。


ちなみに僕が初めて観たマルチェロ・マストロヤンニは、高校の上映会で観た「異邦人」の主役としてでした。カミュの有名すぎるアレの映画化です。若かった僕はこの映画にものすごい衝撃を受け、以来、異邦人のムルソーマルチェロの図式が頭から離れなくなってしまいました。副作用として、カミュの作品のことも、それまで以上に好きになってしまいましたし。
異邦人 (新潮文庫)
当時は知らなかったのですが、映画「異邦人」って、ルキノ・ヴィスコンティの監督作品だったんですね。DVD化されていたら絶対買うのですが、どうもされている様子が無い。ものすごく、観たいんだけどなぁ!
その後「甘い生活」をはじめとして、それなりにマルチェロ出演作を観てきたけど、「異邦人」のときのインパクトを越えるものは無かったんですよねー。


ただ、「甘い生活」を始めとする彼の代表作については、今こそもう一度観返したい気持ちはあります。ガキの時分の僕と、今の僕とでは受け取り方も全然違うだろうし。ただ、ウチの近くのヘッポコレンタルには、置いてないんだよなぁ・・・


あ。そうそう。フランスやイタリアの女優って、若いときはあんなに美しいのに、なぜお年をめしたあとは、あんなに怖くなってしまうのでしょうか・・・。クラウディア・カルディナーレ、怖いよー(泣


それにしても今何が悔しいって、この映画公開前にやっていた、マルチェロ・マストロヤンニ出演作の劇場公開に気づかなかったことです。こういうのを激情後悔という・・・って、スミマセン。