飲んだくれの記

方向音痴で熱しやすく冷めやすい、酒とラーメンの大好きなポンコツが綴る徒然の記。

ぼくらの

仕事帰りに書店めぐりをしてたら、突然、無性にマンガを読みたくなった。
そこで実に2年ぶりに、渋谷のバグースへ行ってみることに。


清潔感のある店内。ブースも広く、若い女の子の客がやたらに多い。もちろん、マンガや雑誌の冊数も、地元のマンガ喫茶と比較すると桁違いだ。いいお店だなぁ。客のカップルが大声で話し合ってるのだけは、勘弁願いたいが。


特に目指すマンガも無かったのだが、以前友人が勧めてくれた「ぼくらの」を見つけたので、一気に読んでみた。

ぼくらの 1 (IKKI COMIX)
ぼくらの 2 (IKKI COMIX)
ぼくらの 3 (IKKI COMIX)
ぼくらの 4 (IKKI COMIX)
ぼくらの 5 (IKKI COMIX)
ぼくらの 6 (IKKI COMIX)


舞台は近未来の日本。夏休みの自然教室でのひょんな出来事ことから、理不尽にも突然人類のためにロボットに乗って、地球を襲う敵と戦う(そして確実に死ぬ)ことになった14人の中学生と1人の小学生の、ひとりひとりのドラマを描いたシリアスなSF。未完。もうすぐ最新刊が出る模様。


エヴァンゲリオンからのインスパイアが無かったとは絶対言わせないこのモチーフだが、シナリオはまったく別のところに力点があり、非常によく練られている。(ちなみにロボットの形状はファイブスター物語モーターヘッドをも髣髴させる。)
線の細い柔らかな画風からは想像しにくいが、貧困や虐待、いじめ、恋、友情、様々な問題を抱える中学生たちの一人一人の生き様(と死に様)が淡々と描かれ、なかには、キラりと光る演出も多い。(ネタバレになるから詳しくは書けないが、内気な少年がロボットの外に出たときに、敵ロボットで起きた反応はよかった)


かように感情を大きく揺すぶるに十分な仕掛けは揃っている作品。
だがしかし・・・なんだろう。今ひとつ、感動させない、のめりこませない何かがあるんだよな。強烈な違和感。それが何であるか、これを書いている今は同定できないのだが・・・。分かるまで、しばらく頭の中で転がしておこう。


ただ、続きが出たら、是非読んでみたい作品ではあるな。


追記:
人間ではないはずのコエムシたちの振る舞いのあまりの「人間っぽさ」(残虐さも含め)に、まずSFとしての違和感の一端があるような気がする。全人類の命がかかっているのに、描かれる世界の拡がりがあまりにもローカルでドメスティックな範囲に留まりすぎている点もまた、違和感の原因だ。これはエヴァンゲリオン以降ブームとなったセカイ系の最大の特徴であると思うが、少年少女たちの振る舞いが世界の存亡を左右するというモチーフには、社会を直視せずに目を裡に向け、自分探しばかりを続ける昨今の若者に特徴的な幼児性が垣間見えるようで、どうにもキモチワルイ。比較的丁寧に描かれているのは主人公たちと、そして彼らと直接かかわりのある人間たちまで。それ以上先の、描かれない政治や社会の反応にはリアリティが欠如しており、そこが作品全体に対する共感を阻んでいるように思えてならない。