飲んだくれの記

方向音痴で熱しやすく冷めやすい、酒とラーメンの大好きなポンコツが綴る徒然の記。

硫黄島の星条旗 読了

硫黄島の星条旗 (文春文庫)

硫黄島の星条旗 (文春文庫)


半年ほど前に読んだ父親たちの星条旗」(ヤングアダルト版)の、いわば原作。言うまでもなく、イーストウッドによる超傑作映画「父親たちの星条旗」の原作でもある。


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史上もっとも有名な戦争写真かもしれない、硫黄島の戦闘のさなかに撮影されたこの写真。ここで国旗を掲げる6人の若者たち。うち3人は直後の戦闘で命を落とし、3人は帰国後ヒーローとして祭り上げられた。そのうちの1人は運命に翻弄され、1人は運命に波乗りしようとして失敗し、もう1人だけが安らかで幸福な生涯を全うした。この最後の1人、ジョン・ブラッドリーの息子が書いたのが、本作である。


生前、硫黄島の戦闘についてほとんど息子たちに物語ることのなかったジョン・ブラッドリーの死後、その息子ジェイムズ・ブラッドリーは国旗掲揚者たちのことをもっと知りたいと調査を始める。この本はその調査結果をもとにした、若き海兵隊員たちの青春ドキュメンタリーであり、第二次世界大戦でもっとも激しかった戦闘の一つ、硫黄島の戦いに対する分かりやすい解説書でもある。


アメリカ側の視点から描いている以上避けられないことではあるが、ときにややヒロイックにすぎる描写や、ビバ、アメリカ!な考え方が鼻につくという指摘もありうる。が、僕はこの書はそうしたイデオロギーを越えた人間、とくに戦争に巻き込まれた若者としての普遍の情感を描ききることに十分成功しているように思われる。


僕の中では、若者にとっての戦争について考える上では、ティム・オブライエンの大傑作「本当の戦争の話をしよう」にも比肩する作品と思われた。

本当の戦争の話をしよう (文春文庫)

本当の戦争の話をしよう (文春文庫)


こうした本をこそ、今の若者に読んでもらいたい。心からそう思う。