飲んだくれの記

方向音痴で熱しやすく冷めやすい、酒とラーメンの大好きなポンコツが綴る徒然の記。

トム・ヤム・クン! 再鑑賞


トム・ヤム・クン! プレミアム・エディション [DVD]

昨年4月に劇場鑑賞したときの感想はこちら


すべての映画が再見に耐えられるわけではない。しかしこの映画はそれに値することを再認識。


一にアクション、二にアクション、三四がなくて、五にアクション。
ストーリーは超B級(ハッキリ言えば、ひどい)だが、そのストーリーのほぼすべてが、いかにアクションをインパクトあるものにするかに資している。つまりは、トニー・ジャーと多彩すぎる敵役の脅威の身体能力と、美しい舞踏を見ているような身のこなしにひたすら感嘆し、賞賛するための映画であると言えよう。
そのコンセプトを思えば、打撃系・関節系の過剰な暴力は眉をひそめるべき対象ではなく、むしろユーモラスな演舞と捉えられるべきものではないか。


ストーリーはきわめて単純。
主人公(トニー・ジャー)は、タイで象と幸せに暮らしていたムエタイ戦士。しかし動物密輸組織に愛する象の親子を奪われた彼は、象を追って組織の本拠地シドニーに乗り込む。そこで悪い奴らに怒りの鉄拳を炸裂させるのだ!


前回の感想でも書いたが、唐突に幕を開ける暴力シーン(飛び膝蹴り)が俊逸。これを見ただけで、この映画が勝ち組に属することが、分かる。
そしてリテイクが異常に難しいであろう、4分にもわたる長回しの階段シーン。ガンガンモノを壊し、バッタバッタと敵をなぎ倒していく間、一瞬たりともカメラが途切れることはない。その計算されつくしたシーンは、興奮というよりもはや感動すら与える。


先にも触れたとおり、この映画においてはユーモアも欠かせないスパイスだ。
ジャッキー・チェン(だよな?)や前作(「マッハ!」)のヒロインのカメオ出演にクスリとしたり、ウンカのごとく湧き出てくるやられキャラのやりすぎぶりに爆笑したり(特に49人関節決めのシーン)、シドニーの街を肩をいからせつつ小象を連れて敵陣に赴く主人公の、クソマジメでおマヌケな姿にツッコんでみたり。
一級のアクションのありようを真剣に模索しつつ、自らを笑い飛ばす軽やかさをも持ち合わせる。これはひとつの知性。憧れるカッコよさだ。


それにしてもDVDで何が嬉しいかって、見ながら声を出せるってことだ。
純日本人でシャイな僕は劇場で爆笑することはないが、自宅では、つい絶叫してしまう。「おお!」「ウオッ」「はうあ!」。まぁ、あまり人様に見られたくない姿ではあるが(しかも近所迷惑)。
この映画は、その絶叫度が他のアクションものに比べて10割増しで高かった。それだけの興奮度を持ち合わせた映画であることは、保証する。


・・・ま、なんでもいいからさ。観て。