飲んだくれの記

方向音痴で熱しやすく冷めやすい、酒とラーメンの大好きなポンコツが綴る徒然の記。

オデュッセイア 読了

ホメロス オデュッセイア〈上〉 (岩波文庫)

ホメロス オデュッセイア〈上〉 (岩波文庫)

ホメロス オデュッセイア〈下〉 (岩波文庫)

ホメロス オデュッセイア〈下〉 (岩波文庫)


イリアス」にも登場するアカイアの英雄、オデュッセウスの後日譚。


トロイア戦争終結後、勝者となったアカイア勢(ギリシャ軍)の英雄たちは三々五々と帰国し、それぞれの運命を辿っていった。そんな中、英雄オデュッセウスだけは、なんと10年間、壮絶な苦難の果てに魔女カリュプソに囚われ、故郷イタケに帰国できないでいたのだ。
故郷イタケでは、美しい妻ペネロペイアに求婚する者たちが我が物顔に振る舞い、あげくの果てにはオデュッセウスの唯一の息子テレマコスの命まで狙い始める始末。
しかしとうとう、オリュンポスの神々は、オデュッセウスを故郷に帰すことを決める。ここに、女神アテネの援助を受けたオデュッセウスの帰国と復讐物語が開幕するのであった。


イリアスの壮大さに比すると、ややちんまりした印象。だが、より生活感に溢れ、感情表現も細やかなので、読んでいて楽しい。
今の道徳観念からは、求婚者たちを惨殺するオデュッセウスの行動を手放しで賛美するのは難しいが、しかし勧善懲悪ものとして民衆に親しまれてきたであろうそのダイナミズムは大いに感じ取ることができる。


イリアスを楽しんだ身としては、この物語の端々に示されるアガメムノンの悲惨な末路や、アキレウスの最期、無事妻ヘレネを取り戻したメネラウスの豪奢な暮らしぶりなども、非常に興味深い。愛着の沸いたこうしたキャラの行く末は、誰しも気になるものだ。


それにしても、その智謀をひたすら称えられるオデュッセウスの狡猾なこと!(笑)彼はとにかくでまかせの作り話が得意だ。その割には、心善き豚飼いたちには信じてもらえなかったりするけど。
また、戦争への出征時から数えて20年も、ひたすら夫の帰還を待ち続けたペネロペイアの貞淑さには、もはや唖然とするほかない。息子テレマコスのようやく成人したばかりで、その経験不足を自覚しつつも奮闘するかわいらしさも、見ものかな。


親しんだギリシャの英雄たちとも、これでしばしお別れ。さて、次は何を読もうかな・・・