飲んだくれの記

方向音痴で熱しやすく冷めやすい、酒とラーメンの大好きなポンコツが綴る徒然の記。

鉄コン筋クリート 鑑賞

今日封切りのアニメーション映画。実は松本大洋の原作、読んだことありません。今朝の日経新聞に映画評が載っており、これがまたほとんど手離しで褒めているのをみて、関心を持ったのです。で、急遽観に行くことに。
アニメーション映画を劇場で観るのは、押井守監督の「イノセンス」以来かなぁ(イノセンスもまた、たまらなく好きな作品です・・・)。


感想。
これ、傑作じゃないか!?


原作は知らないながらも、予想をはるかに上回る出来。まず冒頭の疾走感に圧倒される。僕がよく言うところの、映画的快感がここに。そしてどこか懐かしい日本の風景を取り込みつつも、インドやインドネシアの要素も取り込んだアジアンミクスチャーで猥雑な街並みの描写が素晴らしい。すでに「ブレードランナー」や「攻殻機動隊」などですっかりお馴染みになったテイストではあるけれども、独特な筆感が、それらとはまた異なった、新たな趣を添えている。


そんな舞台、宝町で二人で寄り添いあって生きるクロとシロ。孤児の二人は、暴力を手段にたくましくこの街を駆け抜ける。お互い欠けたものを補いあっているというのが作品全体のコンセプトなのだけれども、しかし、この関係が、商業ヤクザと殺し屋の街への進出によって徐々に壊されていく。


愛、ノスタルジーと変化への恐れ、暴力、死・・・クロとシロはもちろん、登場するヤクザ、刑事、じいさん、みんなそれぞれの思いが重なり、存分に表現される。押し付けがましく無く、淡々と。それが却って胸を締め付ける。その予兆を独特な心に残る言葉で常に示すのが、純粋無垢な預言者であり巫女でもあるシロであり、その存在感はこの映画を終始圧倒している。


唯一惜しいな、と思ったのが、クロとイタチの対決、暗黒面に堕ちようとするクロの心の葛藤の描き方かな。CGを駆使した大きな表現が続くここだけがちょっと、クドい。


それにしてもシロの声優、蒼井優が素晴らしい。素晴らしすぎる。蒼井優という方については、これ書いている時点では顔すら知らないんだけど・・・。


さて、これから買ってきたパンフレットでも見ますかね。