飲んだくれの記

方向音痴で熱しやすく冷めやすい、酒とラーメンの大好きなポンコツが綴る徒然の記。

エデン 読了

エデン (ハヤカワ文庫SF)

エデン (ハヤカワ文庫SF)


ソラリス」「砂漠の惑星」と並んで三部作と称される、スタニスワフ・レムのSF。他の二作同様、この作品もまた知的生命体とのファーストコンタクトを描いたもの。


「技師」「ドクター」「コンダクター」「化学者」「サイバネティシスト」「物理学者」の6名の学者たちが惑星エデンに不時着するところから物語は始まる。彼らは小説中、最後まで職業名でのみ描写され、技師以外はその名前がわからない。その匿名性がこの小説に一種ハードな色合いを持たせている。
彼らは宇宙船を修復しつつも、エデンの探検を始める。その過程で出会った奇妙な建造物と生物。彼らは自分たちの目にしたものに合理的な説明をつけられないまま、その生物との知的接触を試みる。やがて彼らは自分たちがエデン側に察知されていることに気づき・・・


レムによるソラリスに圧倒的に傾倒している身としては、他の知的生命体との意思疎通が可能であるとするこの小説はやや楽観的に過ぎるように映る。
しかしその乾いた文体と想像力の限界を試されるような描写、そして人間存在そのものを相対化する価値観は、やはり魅力的。面白かった。