飲んだくれの記

方向音痴で熱しやすく冷めやすい、酒とラーメンの大好きなポンコツが綴る徒然の記。

逆転世界 読了

逆転世界 (創元SF文庫)

逆転世界 (創元SF文庫)

プリーストの「奇術師」には引っくり返るほどの衝撃を受けたもので(しかし「魔法」は意味が分からなかった。実のところ今でも、分からない)、飛びついたこの本。
原罪をあがなうがごとくひたすら移動し続ける都市、空間も時間も異常な世界に住む主人公の内面描写が素晴らしい。エキセントリックな舞台でありながら、ひたすら読者の共感を獲得し続ける丁寧な描写と、人間ドラマ。これは今まで読んだプリーストの作品いずれにも共通するものであり、また俺がこの作家に惚れてしまったゆえんだ。アイデア一発じゃない、小説としての面白みがこの人の作品にはある(ただし、アイデアそのものもとんでもない)。
この作品でも、ラストには驚愕が待っている。すべての事象に厳密な説明を求める向きには不向きかもしれないが、俺はこれでいいと思う。最後の余韻がまた、いい。
センス・オブ・ワンダーに身をゆだねる喜びを感じさせてくれる一冊。